組み込みボードコンピュータ選定
産業用ボードコンピュータを選択される背景
産業用ボードコンピュータをスクラッチから開発するより、汎用の産業用ボードコンピュータを利用することにより、ハードウエア設計とソフトウェア設計の簡略化、設計文書の簡略化、開発時点からテスト評価からアプリケーション開発が可能であり、市場投入を早めることが可能です。
ドライバ開発やOS移植を考えた評価ボードの場合、産業用ボードは少し異なります。無論、多くのボードは、JTAGインターフェースをもっており、それらの作業が可能な仕組みをもっています。
しかし、産業用ボードコンピュータの場合、すでに、BIOSもしくはbootloaderがサポートされており、多くの場合、Linux や Windowsのための BSP( Board Support Package )もサポートされています。どのような作業を行うかによりますが、基本ソフトウェア設計が完了しているということが産業用ボードコンピュータの利点でありますので、多くのユーザーは、そのソフトウエア資産を有効に利用することが大きな課題となります。
ボード設計から製造を考えた場合、数をまとめて製造をしないとコスト高になります。そこで、汎用産業用ボードコンピュータを導入することにより、少ない数から購入ができ、少量の製品投入ができると言うメリットを持っています。
最近話題となっている安全性や信頼性のためのテストや標準規格への対応などを考えた場合も含め、開発時間短縮と時間を増やすということは重要なこととなっています。このことは、半導体、交通インフラ、医療、通信、産業コントロール、デジタルサイネージ、POS、ルータなど幅広い分野で要求されています。
シングルボードコンピュータ(SBC)
最終製品の仕様が決まっており、修正仕様がない場合、安価なソリューションとなります。
組み込みボードコンピュータの場合、CPU、メモリやストレージ(例えば、NAND Flash、eMMC)が実装され、イーサネット、USB、COMなどの豊富なプリフェラルも準備されています。インテル・アークテクチャの場合、異なります。
コンピュータオンモジュール(COM)
CPUやメモリ周りの複雑な設計はCPUモジュール化して、周辺IOはキャリアボードとして設計できるような仕組みをとります。これにより、2枚1組で1つの電子回路ユニットを構成し動作することが可能です。
このような仕組みをもったCPUモジュールを「コンピュータオンモジュール(Computer On module ; COM)」と言います。
汎用で販売しているCPUモジュール(COM)と同じ仕組みをもっている製品を開発している製造メーカをしばし聞きます。モジュラー形式にしておくことによって、汎用性の確保、多品種少量生産への対応、新しいCPUがでてきたときの機能向上、開発から保守の統一化に役立つことが分かっている企業が多いです。
自社の開発パワーが不足している場合でも、汎用のCPUモジュール(COM)が対応できるとのことです。
そのような点では、CPUモジュール(COM)のコミュニケーション規格がSODIMM形式、オンプッシュ形式、Qseven R1.2, Qseven R2.0、Nano ComExpress、ComExpressなどがあります。製品や価格、将来性のことを含めて、CPUモジュール(COM)のコミュニケーション規格を選定する必要があります。
ARM vs Intel
産業用ボードコンピュータのコア・プロセッサを決める折、多くのエンジニアの中で、ARMか、Intelの動向に注目しているケースが多いです。最近は、ARMに注目度が上がり、Intelアークテクチャを利用していた製品をARMアークテクチャへ変更するユーザが増えています。
ARMアークテクチャを選定する背景には、低消費電力によるエコシステムでありながら、ハイパフォーマンス仕様、そして、安いと言ったイメージのようです。また、モータやセンサ制御主体のARMアイコン(ARM Cortex Mなど)、高演算処理能力とハードアクセラレータを備えた最新ARMプロセッサ(ARM Cortex-A15, ARM Cortex-A9, ARM Cortex-A8), ARM マイコンと最新ARMプロセッサの中間であるARMプロセッサ(ARM7, ARM9, ARM11)と、幅広い製品をラインアップしています。
そのことにより、開発される製品によって選択肢が多いところもあります。ARMプロセッサを選択するなかで悩まれることは、すぐに、H.264などのエンコードやデコード、OpenGL、OpenVGなどのハードアクセラレータを有効にしたいが、手順を調べて、動作させるまでに時間がかかること、UbuntuやWindowsなどPCで動作させていたアプリケーションをそのまま移植をしたいと言った場合、組み込みLinuxやWindows CEなどの場合、CPU処理能力やAPI不足などで動作できない場合があります。されど、最近のARM Cortex-A9やARM Cortex-A15では、Linxu3.xへの対応となり、PCで動作するUbuntuと大差がなくなってきました。また、パフォーマンス向上、メモリ増加により、ARM需要へ拍車をかけていると思います。
しかし、仕様や数量によっては、Intelアークテクチャであったほうが、ハードウエア仕様、ソフトウエア仕様、低コストになる場合があります。また、ATOM x2000といったIntelアークテクチャは、ARMの低消費電力と高演算処理能力に対抗した製品と言え、選定される次期によっては、ARMやIntelのメリットやデメリットがあります。ポジティブワンでは、仕様から製品をテースト…
最新のARMアークテクチャになればなるほど、ボリュームマーケット(モバイル、自動車)向けを優先して、それ以外の製造メーカには、情報が入手しずらい、手に入らないことが多いです。その不満もあり、最近では、産業用ボードコンピュータを窓口として、そこから、ハードウエアの入手とサポートを受けるといった体制づくりをしています。テキサス・インスツルメンツ(TI)社、サムスン社、NVIDIA社、ルネサスエレクトロニクス社がそれに当たります。ポジティブワンでは、これらの情報のとりまとめ、一部の最新産業ボードコンピュータの開発に携わっています。
PowerPC
現在のPowerアークテクチャの市場は、航空宇宙、自動車、通信で利用されることが多いです。
日本では、モトローラ68Kプロセッサ時代から多くの製品に採用され、その後継プロセッサであるPowerPCでも利用されるユーザは根強くいます。産業用ボードコンピュータの歴史のなかでも、68Kアーキテクチャの時代に、汎用ボードを組み込むことをブレイクさせたと言っても過言ではないと思われます。
ARMやIntel系を選ばれるユーザーは、なぜ今更、Powerアークテクチャと言われますが、実績を重んじる製造メーカーでは、ニーズが高いです。
SuperH
ルネサスエレクトロニクス社(旧・日立製作所・半導体事業部)が開発したSuperH(SH)アーキテクチャです。日の丸アークテクチャであり、日本語対応、日本語ドキュメント、日本語対応ツールなどが充実していたことから根強く利用されています。
現在でも、社内でのSH用開発環境やSHでの開発経験が豊富なエンジニアがいることから、新規開発でも、SHを利用したいというニーズが高いです。そのために、SH7760, SH7780, SH7723, SH7724の産業用ボードコンピュータを提案しています。
産業用ファームファクタ
ポジティブワンでは、お客様の仕様や中長期の計画に基づいて、汎用産業用ボードボードコンピュータであるCOM(Computer on Module)やSBC(Single board Computer)を提案いたします。
必要に応じて、キャリアボード受託開発(もしくはCPUボード開発)、アプリケーション受託開発、ドライバおよびBSP受託開発を行うことが可能です。トータル提案が可能ですので、お客様にとって、製品開発の労力の節約や有効的な提案が可能です。
COM-Express(95mm x 95mm)
COM Expressは産業用ボードコンピュータの規格の1つでありCPUモジュールのフォームファクタであるComputer on Module(COM)です。CPUモジュールとキャリアボード、2枚1組で1つの電子回路ユニットを実現させます。ベーシック(125mm x 95mm)、コンパクト(95mm x 95mm)、ミニ(84mm x 55 mm)の3つのフォームファクタがあります。
一般的なCom-Expressは、コンパクト(95mm x 95mm)を指します。最新の仕様では、デジタルディスプレイ(Display Port, HDMI), USB3.0が追加されています。
Nano-Express (84mm x 55mm)
COM Expressは産業用ボードコンピュータの規格の1つであり、CPUモジュールのフォームファクタであるComputer on Module(COM)です。
CPUモジュールとキャリアボード、2枚1組で1つの電子回路ユニットを実現させますの代表的な規格の1つです。ミニ(84mm x 55 mm)の3つのフォームファクタがあります。
Qseven (70mm x 70mm)
Qsevenは、産業用ボードコンピュータの規格の1つであり、CPUモジュールのフォームファクタであるComputer on Module(COM)です。CPUモジュールとキャリアボード、2枚1組で1つの電子回路ユニットを実現させます。
IntelアークテクチャとARMアーキテクチャ(一部SHやMIPSなども含む)の共通フォームファクタとなります。Com-Express、ETX、XTXと比較した場合、小型かつ消費電力であるという特徴があります。
ETX/XTX (114mm x95 mm)
ETX/XTXは、ISAバス(XTXはサポートしていない)、RS-232, IEEE1284パラレル、フロッピディスク、PS/2キーボードをサポートしたレガシーPCから最新PC仕様までをサポートしたCPUモジュールのフォームファクタであるComputer on Module(COM)です。
CPUモジュールとキャリアボード、2枚1組で1つの電子回路ユニットを実現させます。
SODIMM
SO-DIMM (small outline dual in-line memory module)のインターフェースを利用したCPUモジュールのフォームファクタであるComputer on Module(COM)です。
CPUモジュールとキャリアボード、2枚1組で1つの電子回路ユニットを実現させます。メーカごとにシリーズ化されており、CPUのグレードアップやグレードダウンをすることが可能です。
Apalis
Apalisは、Toradex社が定義したマルチメディア向けの独自のCPUモジュールのフォームファクタであるComputer on Module(COM)です。CPUモジュールとキャリアボード、2枚1組で1つの電子回路ユニットを実現させます。
シングルボードコンピュータ(Single board Computer : SBC)
1枚の回路基板に単体のコンピュータとして動作するのに必要なすべての機能・要素を実装しています。
一般的に、Computer on Module(COM)を選択するよりも、安く導入しやすい特徴があります。